ビヨンド 空の彼方に

アリゾナでのルンルン生活

Midnight Summer Dream ただの夏の夜の夢

 

想像して楽しめる能力は大きな才能だと思う。これがあればおひとり様の時間も楽しいものである。人間付き合いや、仕事でもこれは必要不可欠な能力。どうも私にはこの想像力が普通の人よりちょっと多いのかもしれない。そして、時にはこれが暴走する時がある。

 

Sun Suite  

 

今働いているスパにはカップル用のマッサージルームが2つある。Healing Hands とSun Suite。私はこのSun Suite が大のお気に入りである。内装はアースカラーで統一されていて、落ち着いた雰囲気を醸し出しているが決して重い気分にはならない。それが何故かというと、2つあるマッサージテーブルの足元の方には天井から床までとどく大きな窓があり、そしてその1つは外に出られるドアとなっている。

 

そのドアを開ければすぐそばに食事やカクテルをアウトドアで楽しむことができる、大きなテーブルセットが置いてある。そこには直射日光を遮るための緑のドームが優しい影を作っている。そこを左に進んでいくとプール、ジャクージー、シャワー、などがある。ちょっとしたオアシスと言えるだろう。

 

ここで、カップルマッサージ をする時はいつも同僚にお願いしてなぬべく外が見えるようにカーテンを開けてもらうようにしている。レースのカーテンは閉める時もあるけれども、私はこれもちょっと開けて外の景色をもっと身近に感じるのが大好き。

 

 

これはSun Suiteのお隣のお部屋からの景色。Sun Suiteのパティオはこの10倍の大きさ



一つの想い

 

まだ誰にも言ったことはないのだけれども、このお部屋で仕事をする時に必ず頭に浮かんでくるイメージがある。

それは、すぐそこの外に猫が歩いていて、ドアの前で立ち止まり、じーっとこちらを見ている......というもの。

そんな想像というか、実際に猫の影がチラッと目の端に映ることもあるので、いつも何度も、何度も外を見てしまう。そして、なんだ、やっぱりいない。来てくれないかなーなんて心でいつも呟いているのだった。

 

神聖なる愛

 

それが、ある日それが実現した。

もうマッサージも終わる頃に目の端に影が。目をあげると茶色い物体が左から動いて来て、真ん中で止まった。猫?ううん、ボブキャット。

それから、6月の終わりだったと記憶している。ひとりのセラピストが休憩室で休んでいる私を含める数人のセラピストに彼女のお部屋に来てくれと呼びにきた。何があったのだろうとちょっと心配しながらゾロゾロと彼女の後について行く。もうすでに彼女のお隣さんのセラピストが外を見ている。私たちも彼の後ろから同じことをする。

なんと、外の植木の影にボブキャットの親子が寛いでいる。そうだ、Sun Suite で見たおチビちゃんがママと一緒にいる!

 

 

ママは後ろに背中を向けています。おチビちゃんはこちらを見ている?
可愛いでしょ

 

 

ある朝同僚が、来て!と言うので行ってみるとオチビーズが2匹で遊んでいる。それは全くの猫。ぴょん、ぴょんと楽しそう。でもその姿をカメラに収めることはできなかった。これこそが一期一会。その瞬間を逃せばもう2度と同じ風景に回り合うことはできない。あの楽しそうな姿は私の瞼の裏にはっきりと今でも焼き付いている。それからの私は暇さえあれば、窓に行ってこのファミリーがいないかどうか確かめるようになった。事情が許せはiPhoneをポケットに忍ばせて。

 

その日はアポがバラバラと入っていて一日中スパにいなくてはならなかったけれども、暇な時間はたっぷりあった。どうもこの親子は Sun Suiteの外のダイニングテーブルの下で午後の厳しい太陽を避けて、ファミリータイムを過ごしているようだった。なので、その日はそこでスタンばることにした。私のプランは的中。

行ったら、いた。

それで、お部屋の中からオチビーズを怖がらせないように夢中でビデオをとった。

それがこれ。

 

 


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見てください。アリゾナの真夏の昼間の太陽にはいくら野生の動物と言われるボブキャットにだって厳しいのです。ママは体温を調整するためにハーハー言っているし、後ろ姿だって痩せていて骨も見えている。オチビーズの1匹は活発でそのこがウサギを食べている。もう1匹は恐る恐るちょっと頬張る。そして、その残りをママが食べていた。このママは本当に偉大。涙がでる想いで私はこの姿に釘付けになっていた。

 

バイバイ  また明日ねー

 

でも、この日から彼らをこの場所で見かけることは無くなった。どうもお庭の手入れや外装の手直しが始まり、見知らぬ業者が入り騒がしくなったせいだろう。スパの敷地内ではあちら、こちらで見かけたと噂は聞いた。それでも私は毎日このSun Suiteに今でもチェックに来る。

 

なんだろう束の間の逢瀬だったけど、あんな風にもう会えないと思うと心が引きさかれるように痛い。それはもしかして野生という厳しい状況の中でしか見ることのできない生の尊さ、母の愛の偉大さを垣間見せてくれたからだと思う。この夏は決して忘れないね。ありがとう。